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高知 メガネのハマヤは、浜田清と久美+タカアキのメガネ店です。

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〒781-2105 高知県吾川郡いの町新町66

近視で内斜位について

事例 4

女性 30代のD様 近視で外斜位?

眼精疲労があり、近業が苦手。
「斜視と言われ、プリズム入りメガネを作ったが、強く感じるし、揺れて掛けられない」とのことです。

そのメガネの度数は
R Sー1.25D 1.0△B.I.
L Sー1.00D 1.0△B.I.
外斜位を矯正するベースインプリズムが入っています。

当店検査では、

オーレフ(コンピュータによる他覚値)のデータ
R Sー1.50D C−0.25D Ax176
L Sー1.25D C−0.25D Ax161



裸眼視力
R(右眼) 0.2P
L(左眼) 0.3P

オートレフの度数からすれば、裸眼視力が低い感じがありました。

遠見カバーテストでは、外斜位の動きはありません。むしろ何回かテストを繰り返していると内斜位っぽい感じがします。

 
・ カバーテスト

眼位ズレの検査に用いています。

斜位があるのかどうか
斜位なのか斜視なのか
眼位ズレの方向は
など、カバーテストは*両眼視の状態や異常を知る上で欠くことのできない検査です。

両眼視とは
両眼を使って、あたかも一つの眼で物を見ているように感じる機能です。
同時視、融像、立体視、深径覚などの機能があります。

これは、近視も外斜位も怪しい。
お尋ねしてみると、「子供の時は遠視のメガネを持っていたが、掛けないことも多かった」とおっしゃいました。

なるほど、やはり通常の近視ではない。「ひょっとしたら遠視の可能性もある」というところから屈折検査を始めました。

こんな場合、片眼を遮蔽して右眼と左眼を別々に測定する「単眼視検査」でのデータは不安定です。

通常、片眼を遮蔽して生活はしていません。単眼視のときは、輻輳力(眼球を内側に寄せる力)が不安定になり、そのために調節力も不安定になりやすいのです。

輻輳力と調節力(眼球の中の水晶体を厚くして、ピントを合わせる働き)は連動しているので、調節によって屈折度数も変化するということです。

たとえば、弱度の遠視系の人が、単眼視検査(オートレフの他覚値も単眼視でのデータです)では、近視系に測定されることもあります。

当店では、特殊な装置を使用して両眼を開けたままで右眼と左眼を測定する「両眼開放屈折検査」を実施しています。
単眼屈折検査→片眼を遮蔽しての検査

両眼開放屈折検査→両眼を開けたままで検査


両眼開放屈折検査で慎重に遠視の可能性を探ってみたのですが、遠視はありませんでした。

5mでの基本度数は、
R Sー1.00D C−0.25D Ax2
L Sー0.75D C−0.25D Ax170
(SはSpherical、遠視、近視の球面度数。DはDioptre、曲光力、度数の単位。CはCylindrical、円注、乱視度数。
AxはAxis、乱視軸)
眼位は、外斜位 3.0△B.I.(ベースイン)。
(△はPrism dioptre。BOはプリズムのベース方向)

え、やはり外斜位なの?
いえいえ、まだ決めつけてはいけません。疑っています。

調節力は正常です。問題ありません。

輻輳力も正常値なのですが、強すぎる感じがありました。
通常は、グーという感じで眼球が寄ってくるかたが多いのですが、ギュッ!という感じで眼球が寄ってきます。
輻輳力とは、近くのモノを見るときに、近くに焦点が合うような視線に、眼の筋肉を内側(鼻側)によせる力のことです)


過剰に輻輳が働いているのでは。

近見でのカバーテストでは外斜位でした。
外斜位量は、5△〜6△B.I.

近見は遠見眼位が正常なかたでも、生理的外斜位が6△B.I.ぐらいあるのが普通です。
D様の場合も近見眼位は、正常範囲内といえるでしょう。

調節性輻輳(調節に伴う輻輳量)も正常範囲。

外斜位だけど、検査では内斜位になる。「外眼筋も神経支配されているのですよ」ということは事例3で書きました。
ということは、その逆もありうるわけです。
「本当は内斜位だけど、検査では外斜位になる」ということが。

D様の場合、子供時代に遠視がありました。

遠視の眼は絶えず眼の筋肉を使って調節をしている眼です。(未矯正の場合)遠くを見るときも調節しますし、近くものを見るときはもっと調節します。

それで、眼が疲れたり、肩がこったり、集中力がなくなったりなどの症状がでてきやすくなります。


遠視とは、眼が全く調節を行っていない(例えば無限遠方を見ている)ときに、眼に入る平行光線が網膜より後に結像してしまう状態をいいます。

この状態では、ものがハッキリと見えませんので、調節機能で焦点を網膜上にもってくるようになります。
常に毛様筋を使い眼が緊張しているため、眼が疲れやすくなります。

5メートル視力表での視力測定の結果がいいから正視だと勘違いしている人もいるようですが、視力1.2以上の人の中には、正視の人の他に遠視の人もいるので注意が必要です。

お子様は、遠くの視力だけではなく、近見視力の検査も必要です。

遠視が原因でおこる斜視があります。

調節に伴って、両眼が内側に寄る眼球の動きがおこります。(輻輳)
近くのものを見るために強く調節すると、それに伴って強い輻輳がおきます。
すると、強い輻湊のために「調節性内斜視」になる恐れもでてくるのです。


正位
無限遠方を見ているときは、両眼の視線がほぼ真っ直ぐ正面に向いています。
両眼とも網膜の正常な位置に結像します。

内斜視
無限遠方を見ているときに、片眼は内側を向いています。
片眼が網膜の正常な位置に結像することができません。
こちらもご覧ください→「抑制について

D様は成長し、遠視はなくなりましたが、子供時代に適切に遠視のメガネを掛けていなかったこともあり、脳には遠視の時の記憶が残っている。
だから、「時々過剰な輻輳(内斜位)が顔を出してくる」ことも考えられます。

「近業が苦手」というのも近見を明視するための調節により、脳が時々過剰な近見反応を起こしている可能性もあります。

いずれにしろ、今回の検査結果ではベースインプリズムは必要ありません。
D様は斜視でもありません。

調製度数は、
R Sー0.50D C−0.25D Ax2
L Sー0.50D C−0.25D Ax170


プリズムは入れていません。低矯正にしたのは近見時での調節性輻輳を減少する目的です。
「近見時は裸眼で明視してもOKです」とお伝えしています。



「他店で調製し、そのメガネが具合が悪くて当店で調製すると上手くいった」ということは少なくありません。

それだけメガネ店にはレベルの差が大きいといえるのですが、眼科の発行した眼鏡処方による不具合も多いです。

「斜位があっても、プリズム矯正はしません」という眼科もあります。
プリズム矯正は検査に手間暇がかかり、経験やテクニックいるからでしょうか。

今回の事例は斜位があり、メガネ店でプリズム矯正をされていましたから、その点では合点がいきます。
だが結果は良くなかった。

「近視で外斜位」のかたは多く、「近見時に具合が悪い」と訴えられると「ではプリズム矯正をして輻輳を楽にしましょう」と調製することもよくあることです。

けっして、間違っている調製ではありません。適切にプリズム矯正をすることは、快適なメガネ調製のための基本でもあります。

しかし、プリズムは入れ方に工夫が要ります。

検査データを頭から信用し、プリズムを入れるのは「木を見て森を見ない」ことにもなり兼ねません。


日常視とは違う「ビジョンテスター」で検査した眼位データは、参考程度にしないといけない場合もあります。
当店はテストフレームを使用して、で眼位検査をしています。

プリズム矯正に絶対的な法則はないのですが、症状、眼位、環境、年齢、使用目的、などを考慮に入れ、経験を活かして上手にプリズム処方をしていくしかないですね。

眼球運動をつかさどる筋肉を「外眼筋」といいます。
外眼筋は、4つの直筋と、2つの斜筋で構成されています。

内直筋が、主に内転および輻輳運動を行う筋肉で、眼筋の中では一番大きく、その作用も外直筋よりも強いです。

外直筋の作用は、内直筋に比較して弱いです。
なので内斜位のほうが問題が起きやすいです。

上下筋は、さらに弱いですから、上下斜位のあるかたは、正常な眼球運動が阻害される確率が高くなります。
 
 
19 外直筋
20 内直筋
21 上直筋
22 下直筋
23 下斜筋
24 上斜筋
正常な両眼視機能は、両眼の眼球運動が正常に働くことが条件です。

D様は「斜視」と言われたことを気にされていました。

誰に言われたのかわかりませんが、眼科では斜位であっても斜視、もしくは隠れ斜視と説明しているところもあるようです。

眼位というものも気にすればするほど自律神経が乱れ、異常な動きになる場合もあります。

女性で繊細なD様に斜視ではないのに「斜視です」と断定したことは配慮に欠けていたのではないでしょうか。

D様には「ご安心ください。斜位はありますが、斜位はほとんどのかたにあるものです。斜視でもありませんし、目には大きな問題はありません」とアドバイスをしました。

なお、メガネは実際に長時間掛けて試してもらわないと100%のことは、わかりません。(具合がいいかどうか)

今回のケースでは、具合が悪いメガネが参考になりました。このメガネがダメだったから違う方向を探ることができた面もあります。

人間の目も生きていますから、不安定要素を持ち合わせています。
私が最善をつくして調製しても、ダメなときはあります。

そんな場合、共同責任という意識があれば、もし、失敗だと感じたとしても次に活かせます。

その時は、メリット、デメリットを上手に天秤にかけて考える知恵が、お客様と私たちについています。

上手に私たちを使っていただければ、成功する確率は高くなります。
 
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