「フィッティング技術」はメガネを作るうえで、絶対にかかせない要素です。 「メガネを生かすも殺すも、フィッティング次第」といっても過言ではありません。 人間のお顔の大きさ、耳の形、鼻の形はさまざまで、お顔に合わせてキッチリとフィッティングをすることによって、はじめて「光学的要素」、「力学的要素」、「美的要素」が満たされるからです。 「光学的要素」とはメガネレンズの光学的機能が正しく発揮できるように、主にメガネの「前傾角」や「そり角」、「角膜頂点距離」を整えることです。 「前傾角の調整」とは、メガネの用途に応じてメガネの角度を調整することです。 老眼用にメガネを作る場合は前傾角はやや深めに調整します。車の運転用など遠方視用にお作りする場合はやや浅めの前傾角にします。遠近両用メガネの場合は中間ぐらいの前傾角にします。 特に、遠近両用メガネの場合は視線をメガネの上方から下方への移動をしなくてはいけません。 それには前傾角の微妙な調整が必要になります。 前傾角が変化すると近用部の視野の広さや、下方部への視線の入りやすさが変化します。 「そり角の調整」とは、メガネの用途に応じてメガネのカーブを調整することです。 視線とレンズの光軸ができるだけ一致するように整えます。 「角膜頂点距離の調整」とは、レンズ後面と角膜までの距離を左右が揃うように整えたり、レンズ度数により距離を調整したりします。 角膜頂点距離が変化すると度数の矯正効果も変化します。 頂点間距離を短くすることにより、違和感を減らすことも可能です。 「前傾角」、「そり角」、「角膜頂点距離」のいずれも、「前のメガネの調整具合」、「使用目的」、「首を傾けて見ているなどの癖」などを考慮に入れてフィッティングをします。 光学的要素が満たされていないフィッティングは、レンズの命である光学的機能が発揮できません。 「力学的要素」とは、メガネがズレ落ちないように、かつ耳や鼻が痛くならないように整えることです。 メガネがズレ落ちないように調整ができても、痛みがでるようであればなんにもなりません。 その加減が技術者の腕の見せ所です。 お顔に合ったキッチリとしたフィッティングが施されると、痛みもなくお顔とメガネがすいつくような感覚になります。(まるでマグネットでもあるような感覚です) このフィット感覚は、本当に気持がいいものです。 耳まわりは、耳よりも前のモミアゲやこめかみをメガネの腕(テンプル)で強く押さえることのないようにします。 ここを押さえると、窮屈で痛みを感じやすく、それでいてメガネがズレ落ちるのを防ぐ効果がありません。 逆に枠全体を前に押し出す力がかかってしまうので、かえってズリ落ち易くなります。 耳の後ろは巧くそらしを付けて合わせます。 耳の後ろ部分は人さまざまでいろんな形があります。へこみがあるかたが大半で、そのかたにはフレームの腕先に緩やかなそらしをつけて、メガネの腕で頭を抱えるようにします。
ただし、「少しでもズレたらイヤだ」というかたもいらっしゃいます。そんなときは、メガネの腕を少し伸ばし気味に調整し、耳にまきつけるような部品をつけることもあります。 パッド(鼻当ての部品)を交換することによって、ズレ落ちを防ぐことも出来ます。 パッドの種類は沢山ご用意しております。鼻の形や装用感に応じて交換いたします。 【お客様の中には、「横幅をもっと強く締めてください」とおっしゃるかたもおられますが、横幅(コメカミ付近)は強く締めてもメガネのズレは解消されません。 それどころか強く締めれば、メガネが前に飛び出す要素が出てきて、よけいにメガネがズリ落ちます。 コメカミ付近は少しあけるか、もしくは軽く触れる程度にしたほうがいいです】 力学的要素が満たされていないフィッティングは、快適な視生活はおくれません。 「美的要素」とは、主にメガネの水平ラインを整えます。人間の顔というのは必ずしも左右対称にできているわけではありません。 厳密にいえば、みなさん左右の目の高さや眉の高さ、耳の位置が違います。左右の違いを考慮に入れて、お顔とメガネが調和するように整えていきます。 美的要素が満たされていないフィッティングは、他人から見られた印象が悪くなります。 フィッティングの大切さがおわかりになりましたでしょうか。 眼鏡技術者ならば、必ず習得しなければいけない技術です。 それほど大切な技術ですが、おろそかにする店は少なくありません。 眼鏡技術の中でも、この技術は機械化できないからです。 機械化ができないということは、熟練した技術者になるには相当な時間を要します。 時間がかかり、売上効率の悪い「技術力」は売上重視の店では軽視されているのが現実です。 メガネの通販業者にいったては、技術軽視どころか、技術放棄です。 まったく何をか言わんやです。 では、フィティング技術に力を入れている店と、そうでない店との違いはどこにあるのでしょうか。 フィッティング技術をキッチリとやる店は、「レンズを入れる前にフィッティングをします」 なぜかといいますと、 ●レンズを入れる前(メガネとしての完成品になる前)にお顔に合わせてフィッティングをすることによって、その枠を購入するかどうかを最終的に検討ができます。(かけ心地が悪いようでしたら、枠を変更していただきます) ●枠に不良があれば、この時点で発見できる可能性が高いです。(調整中に破損するようなことがあれば、交換させていただきます) ●レンズを入れる前のほうが、入れたあとよりもはるかに調整がやり易いです。(完成品後もフィッティングはできます。微調整をすることも多いです) ●仕上がりを取りにこられるときも、メインのフィッティングはしていますので、お渡しするのがスムーズになります。(代理のかたが取りに来られても、調整済みですから大丈夫です。仕上がりを郵送することもできます) このように、「レンズを入れる前のフィッティング」は大切です。 さらに肝心なのは、「レンズを入れる前にフィッティングをしないと、レンズの光学中心の正しい設定(心取り)ができない」ということです。 「光学中心の正しい設定」とは、レンズの光学中心を使用目的や目の位置によって、玉型のどの位置にするかを決めることです。 こちらもご覧ください→「他店で購入されたメガネのフィッティング調整について」←クリック フィッティングについて解説しました。 しかし、どの枠でも適切なフィッティングができるというわけではありません。 たとえば、セル枠は鼻当ての部分が固定の枠が多いので、そこの調整は難しくなります。 枠の手の部分が弾力の強い素材で直線的なデザインでは、お顔を抱え込むような快適なフィッティングはやり辛いです。 メガネ枠選びも重要です。ファッション性と実用性を天秤にかけて、メガネ枠を選択してください。 浜田 清と久美が適切なアドバイスをいたします。
■セル枠にパッドを取り付けることもできます→「セル枠改造」←クリック ■フィティングをするための工具で、ヤットコ類です。↓これらの工具を駆使して的確なフィッティングをしていきます。 工具が多ければいいというものでもありませんが、技術に力を入れているかどうかは工具類の多寡も判断材料の一つになります。 |
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