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高知 メガネのハマヤは、浜田清と久美+タカアキのメガネ店です。

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眼鏡処方箋で、遠近両用メガネを作ると。

■遠近両用メガネ

事例2

眼科発行の眼鏡処方箋をご持参の60歳代のB様。
遠近累進メガネをご希望でした。

眼鏡処方箋度数は、
遠用 右 S+0.75D C-1.50D Ax90
   左 S+1.25D C-2.25D Ax90   PD63mm

近用 右 S+3.00D C-1.50D Ax90
   左 S+3.00D C-2.25D Ax90   PD61mm

(SはSpherical、遠視、近視の球面度数。DはDioptre、曲光力、度数の単位。CはCylindrical、円注、乱視度数。
AxはAxis、乱視軸。PDは瞳孔間距離です)

この処方箋を拝見して、まずオヤっと思ったのは、左右で加入度数が違うことです。
遠近累進メガネの場合、左右で加入度数が異なれば、累進帯長での横幅視野などが左右で異なってきます。
(加入度数が少ないほど、累進帯での視野が広くなり、ユレ歪みが少なくなります)

  
「加入度数」とは、遠用部の度数と近用部の度数との度数差のことです。
たとえば、遠用部の度数が+2.00Dで、近用部の度数が+5.00Dならば、加入度数は+3.00Dです。

これは、遠近累進メガネが使いづらくなる可能性が高くなります。
人間は左右眼での情報が異なるものは嫌う性質があるからです。
(メガネを調製する場合、度数に関してもできるだけ左右眼での調節バランスが取れていることが望ましいです)

*左右で度数差が大きい不同視のかたなどに、左右で加入度数を変えることにより、近用部でのプリズム誤差が少なくなり、デメリット<メリットの場合があります。

眼鏡処方箋ご持参された場合、「この眼鏡処方箋度数で、メガネを調製してください」というお客様の意思であり、基本的に意思は尊重します。
今回も遠近累進テストレンズで、処方箋度数をセットして「これが処方箋の度数です」と見え方など確認をしていただきました。
しかし、不安が一杯の処方箋でしたから、加入度数のことなどをご説明して「当店で、検査、確認をしてみましょうか」とご提案をしました。

結果、「処方箋度数で、お願いします」とのことで、処方箋度数で遠近累進メガネを調製しました。



後日、やはり不安が的中し、「見え方などの具合が悪い」とお申し出があり、当店で検査することになりました。

5mでの両眼開放屈折検査の度数は
右眼 (1.0×S+1.75D C−2.75D Ax85)
左眼 (0.9×S+1.75D C-2.75D  Ax90)

左眼上斜位  R1.00△B.U.
外斜位 3.00△B.I.

近見は
外斜位 13.00△B.I.
加入度数は、右、左ともADD+2.75D
(これは、遠用度数にプラス度数の2.75Dを加えた度数が近用眼鏡の適正目安度数ということです)

上下斜位があり、上下開散力(融像力)の検査では、開散力に左右での違いがありました。
つまり、あきらかに「左眼上斜位」が存在しているということです。

B様とのお話合いの結果、遠用度数は
右眼 S+1.25D C-2.50D Ax85
左眼 S+1.25D C-2.50D Ax90

に決定しました。

斜位を矯正するプリズム度数は、1△B.I.で、外斜位のみを矯正しています。
左眼上斜位を矯正しなかったのは、上下斜位が不安定で検査方法によっては、上下斜位が検出されなかったりしたからです。
上下斜位は一過性であることも考えられますし、
・近見では、上下斜位はない
・プリズムを装用しても「見え方などの変化はない」
ということで、上下斜位の矯正は見送りました。

外斜位に関しては、近見外斜位もそこそこにあり、今後、輻輳力も弱ってくることも考え、違和感のことなども考慮に入れて1△B.I.で試していただくようにしました。

加入度数は、
・使用目的距離
・使用時間
・使用環境
・レンズタイプ(累進帯長の長さの違い)
・前回のメガネ度数
・B様の適応、許容能力など

などを考慮に入れて決定していくことになります。
「加入度数をどうするか」は、かなり気をつかうところです。

遠近累進メガネは、加入度数が強くなればなるほど、像の揺れ感が強くなるなどの欠点もでてきます。
像の揺れ感の点では、加入度数は弱めたほうがいいのですが、弱めると見え方が落ちるというデメリットもでてきます。
メガネはやはり見るための道具ですから、見え方の悪いメガネもいけない訳です。
それで、個人個人に適した加入度数を探っていくことになります。

B様の場合も、レンズタイプによりさまざまな加入度数を実際にテストレンズで試していただきました。
 
累進レンズには、累進帯長が11mm〜23mmまであります。

・遠用重視設計
・中間距離重視設計
・近用重視設計

・外面累進設計
・両面複合累進設計
など、さまざまの種類、タイプが沢山あります。

この中から、適した累進メガネを選ぶのはけっこう大変な作業です。

最終的には、累進帯長が11mmタイプで、加入度数は+2.50に決定しました。

11mmタイプの遠近両用レンズは、視線が近用部に入りやすくなります。
近方視で視線を下げる量が少なくてすみます。
デメリットは、14mmタイプの遠近累進や、中近累進に比較して、累進帯の幅が狭くなっています。

メガネをお渡し時点では「良く見えます」とのことで、ひとまず一件落着です。
でも、「長時間使用していると、なんだか気持が悪くなってくる」などの不具合が発生する可能性はゼロではありません。
絶対に唯一正しいメガネなんてものは、存在しないからです。

もし、具合が悪い場合は、当店とお客様の共同責任共で、共同で解決していきます。



たいていの眼科では、遠用度数と近用度数を測定して、その度数で遠近両用メガネを調製するように指示をしてきます。
「遠近タイプによって、加入度数をどうするか」などの配慮はしません。というかさまざまな遠近累進レンズで、適切な加入度数を選択するということは眼科では出来ません。

そんなことをしていたら、とても時間がかかりますし、一人の患者さんにそれだけの時間は取れません。
もし、時間が取れたとしても遠近累進の知識がないと、適切な加入度数を選択できるものではありません。

今回の眼科処方の問題点は、
・右眼の遠視が弱すぎる
・右眼の乱視が弱すぎる
・右眼の乱視軸が90
・加入度数が左右で違う
・PDが63mmである

人間の眼は不確実要素もありますから、測定した時点ではこれぐらいの度数だったのかもわかりませんが、一ヶ月ぐらいでこれぐらい乱視が大幅に変化するかたは少ないです。(糖尿病などのかたに、病的変化をすることはあります)

意図的に右眼の乱視を弱めて処方することも考えられますが、右眼だけ弱める意図はサッパリわからない。

眼科処方では、左右とも90°、90°とか180°、180°という乱視軸が多いのですが、細かく測定すると、案外ピッタリ90°というのは少なくて85°だったり93°だったりします。
乱視度数が弱くて、単焦点レンズ(遠近両用ではないレンズ)なら、85°を90°で調製しても大きな問題になることは少ないですが、乱視度数が強くて、遠近両用レンズでは見え方に大きな影響がでてきます。

B様の右眼乱視軸は、90°と85°では見え方のスッキリ差が全然違ってきます。
 
当店ではクロスリリンダーという道具を使用して、乱視を細かく測っていきます。
クロスシリンダー法に「両眼開放屈折検査」を組み合わせれば、検出精度が一段と向上します。 


加入度数に関しては、あえて左右で加入度数を違えて処方するテクニックもあるのですが、累進テストレンズを置いていない眼科ではそのテクニックが使えるとは思えません。

  
PDに関しましては、遠近累進メガネは必ず左右眼でのPDを測定して、必ず左右眼でのPDで調製していきます。
←のように左右で3mmぐらい違うかたもいます。
左右合計でのPDしか記入していない眼科処方は、累進メガネを調製するには、アバウトすぎます。

眼鏡処方箋で、遠近累進メガネを作るのは不安。こう思っているのは、私だけではないでしょう。

眼鏡処方箋でのトラブルは、珍しいことではありません。
「眼科は、光学的なことに優れている」ということはありません。実用的で快適な遠近両用メガネを作りたければ、眼鏡士にご相談ください。

もし、B様が具合の悪さを眼科に訴えられたら。
下記のことを言われることが考えられます。

・「メガネの加工、フィッティング調整が悪い」
たしかに加工、調整に問題があり、具合が悪い場合もありますが、そもそも遠近累進のレイアウト、調整などに詳しくない眼科がどのようにして、そういう判断を下すのでしょうか。

・「度数は、間違っていません」
「遠方専用、もしくは近方専用メガネであれば、問題なかった」かも知れません。少なくても遠近累進メガネよりは使えるメガネになっていたでしょう。

これは、「遠近累進を希望するあなたに責任があります」と言いたいのでしょう。

・「再処方を発行します」
その場合、昨今「メガネ屋さんで、無料で交換してもらいなさい」と言う眼科が増えてきました。

無料補償制度についてこちらもご覧ください→「無料補償のメガネ店を強くすすめる眼科について」←クリック

メガネ屋がそういう無料交換はしていない。となると、「そういうメガネ屋を選んだあなたが悪い」ということになるのでしょう。

誤解のないようにお願いしたいのは、眼鏡士は病気の診察、診断はできません。
病気のことは、眼科医にご相談ください。
 
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