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高知 メガネのハマヤは、浜田清と久美+タカアキのメガネ店です。

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〒781-2105 高知県吾川郡いの町新町66

複視について 9 

複視とは一つのものが二つに見える現象です。

複視の事例 9

40代のI様

ある日、突然複視になった。眼科を受診して一ヶ月が過ぎたが良くなる気配がない。
早急になんとかしないと仕事ができない。

とご来店されました。

事例8のかたと症状は良く似ています。
同じように内斜視が発生し、複視では具合が悪いので片眼に眼帯をされていました。

5mでの基本度数は
R 1.5×Sー2.50D C−0.50D Ax10
L 1.5×Sー1.75D C−0.75D Ax110
でした。
斜視量は、約50△ B.O.

50△のプリズム量は、通常のレンズでは製作不可能です。
必然的にフレネル膜での矯正になりますが、フレネル膜は解像度が落ちる欠点があります。

解像度が落ちるということは、矯正視力も落ちます。
I様はお仕事で車の運転も頻繁にするので、視力が落ちるのもマズイのです。←フレネル膜
 
フレネル膜20△プリズムでの見え方  

試しに、フレネル膜を両眼に振り分けて遠方を見ていただいたのですが、「ウーン、これでは運転は厳しい」とおっしゃいました。

複視のままでは、運転は相当に危険です。かといってフレネルの25△の見え方でもイマイチです。

それで、片眼にフレネル膜プリズムを貼る方法をご提案しました。
ただこの方法は片眼の視力が落ちますから、両眼視機能にとってはベストな方法ではありません。

それでもフレネル膜を貼らないほうの眼は、1.0以上の視力がでますから、練習をすれば遠近感はつかむことができます。
片眼を眼帯等で遮閉するよりははるかにマシです。
片眼を遮閉するということは、抑制が入る危険性が高くなるからです。

片眼フレネル膜を試していただいたところ「なんとか掛けられそう」ということで、下記の度数で調製することになりました。

R Sー2.50D C−0.50D Ax10  5△B.O.(ベースアウト)
L Sー1.75D C−0.75D Ax110 5△B.O.(ベースアウト)

フレネル膜プリズムで、35△B.O.

フレネル膜は35△を左右眼で2枚用意し、交互に貼ることもご提案しました。
これは抑制を防ぐ効果を狙った処置です。

この度数で様子を見つつ、適時プリズム量を調整していく計画を立てました。

フレームはレンズが薄く軽くなる「ウスカルフレーム」を選んでいただきました。
ウスカルフレームは、強度近視のかたに開発されたフレームですが、プリズムレンズとの相性もいいです。

I様の場合はB.O.プリズムで通常のフレームに入れると、耳側のレンズ緑厚が相当厚くなります。
それがウスカルフレームでは、随分と薄く軽く作ることができます。

フレネル膜を貼るのにも好都合です。
フレネル膜の直径は66mmなのですが、たいていのウスカルフレームは、フレネル膜1枚で右眼と左眼の両眼に貼ることが可能です。

R Sー2.50D C−0.50D Ax10  5△B.O.
L Sー1.75D C−0.75D Ax110 5△B.O.
の度数で、入れた場合、

普通フレームとウスカルフレームの緑厚と重量の違い。
(レンズは屈折率1.5素材、プラスチックレンズでの計算です)
 
55□15サイズの普通のフレーム


右 最大緑厚 8.4mm
左 最大緑厚 8.3mm

重量
右 7.8g
左 7.8g
 
43□23サイズのウスカルフレーム 

右 最大緑厚 6.4mm
左 最大緑厚 6.4mm

重量
右 4.1g
左 4.1g

I様の場合も複視になった原因はサッパリわかりません。
外眼筋麻痺の原因は外傷が最も多く、約50%を占めていますが、I様は「外傷はまったくない」とのこと。
他に原因として血管性病変、腫瘍、炎症などありますが、そういうものもありません。

強い薬を飲んだ覚えもない。持病もないということでした。

「職場で、強いストレスにさらされたということはないですか」とお尋ねしますと、
「ウーン、上司か変わったけど、強いストレスということはない」とおっしゃいました。

とにかく外眼筋麻痺になるような原因で、「思い当たることはまったくない」と。

治療として病院ではステロイドやビタミンを処方されましたが、全然よくならず、他の大きい病院を紹介されました。
しかし、その病院でも診断結果は同じこと。
県外の有名な病院も受診してみましたが、やはり「外眼筋麻痺の原因は不明」と言われたそうです。

メガネ調製後 35日目
内斜視量 40△〜45△B.O.
やや斜視量が減ってきています。とりあえず良い傾向です。

50日目
内斜視量 40△B.O.
この段階で10△ぐらいの内斜視量の軽減が見られます。
フレネル膜を25△に貼りかえることをご提案。多めのプリズム矯正はできるだけ避けたいからです。

54日目
注文していたフレネル膜が届いたので、ご来店いただきました。
念のために眼位を測定すると、なんと25△〜30△に斜視量が減ってきています。
急遽、10△フレネル膜を再注文。
眼位を確認して良かった。(^^♪

65日目
眼位の検査、20△〜22△B.O.になっています。ドンドン減ってきています。
これは、プリズム効果の現れでしょう。

78日目
18△B.O.になっていました。「フレネル膜の10△も入りません」と説明。
しかし、えてして麻痺もぶり返す可能性もあるので、具合が悪くなったら再度貼るようにアドバイスしました。

90日目
カバーテストでは良い状態になっています。最初の眼位とはまったく違ってきています。
「斜視から斜位に移行」という感じです。
 

・ カバーテスト

眼位ズレの検査に用いています。

斜位があるのかどうか
斜位なのか斜視なのか
眼位ズレの方向は
など、カバーテストは*両眼視の状態や異常を知る上で欠くことのできない検査です。

斜視、斜位のズレ量などもある程度わかります。
斜視と斜位の違い
 ・斜視 眼位(外観)
眼位異常が顕在しています。見た目にもかなり顕著な眼位異常が見受けられます。

両眼視機能
両眼視の異常があります。
両眼でものを見ることはほとんどなく、片眼でものを見ます。使わない(使えない)方の眼が偏位します。偏位眼は右眼なら右眼が常に偏位している「片眼斜視」と、左右眼が交代に偏位する「交代斜視」があります。(ただし、一般的な斜視の場合です)

・斜位 眼位(外観)
眼位異常は潜在しています。見た目にはほとんどわかりません。

両眼視機能
両眼視は保たれています。
両眼でものを見ることができますが、潜在している眼位異常によりスムーズな両眼視機能が発揮できません。

眼位は検査方法によって結果が違って出る場合もあります。
今回、ある検査では8△〜10△、もう一つの検査では13△B.O.でした。

120日目
内斜位量 10△B.O.
メガネそのものを作り直すことになりました。

R Sー1.25D C−0.50D Ax12  2.5△B.O.
L Sー0.75D C−0.75D Ax110 2.5△B.O.

まだ内斜位は残っているのですが、この内斜位は外眼筋麻痺が起こる前にもともと存在していた内斜位の可能性もあります。
ですから、内斜位を矯正する5△B.O.は入れるようにしました。

I様に再度しつこく「何か思い当たることはなかったですか?」とお尋ねしますと、
「インフルエンザにかかり、タミフルを飲みました。でもそれは3ヶ月前だし」とのこと。

あー、ひょっとしたら、それが原因かも?

今回、結果的に眼科の治療は役には立たなかったようです。
でもこういことはやってみないとわからないことですから、仕方ありません。
ただ、眼科は途方に暮れているI様にメンタル面での配慮が足らなかったように感じます。

まぁ、忙しい眼科に手間暇がかかるメンタルケアを期待するのは難しいです。

I様のメンタル面でのアドバイスなどは当店で行い、当店での過去に複視になったかたの事例もお話ししました。

今後I様の事例も参考にさせていただきます。



ある日、I様からお電話をいただきました。
「私のプリズム度数はどれぐらいでしたか?」と。かかられている眼科から電話をかけているとのことです。

I様にはプリズム度数はお知らせしていたのですが、その書類を持参していないので、当店に問い合わせをされました。これ眼科がプリズム度数を確認するためのものです。

レンズのプリズムはレンズメーターで測定すればわかるのですが、プリズム測定に苦手な眼科もあります。
眼科が光学的知識に疎いのは仕方ありません。(ただし、強いプリズムはレンズメーターによっては測定できません)

それはそうと、プリズム度数を訊いた眼科はどのような対応をしたのでしょうか・・・?


眼科によっては「メガネ屋がプリズム矯正をするのけしからん!」と対応するところもあります。



だから、メガネ屋によっては眼科がらみのプリズム矯正に二の足を踏む場合もあります。

これは仕方ないですね。弱い立場のメガネ屋は眼科に睨まれるのは怖いですからね。

私はメガネ屋を非難する眼科さんに言いたい。「
目的はなんなのか」をよーく考えてください。

ユーザー本位で考えれば、ユーザーさんが少しでも満足するように上手にメガネ屋を利用してくれればいいんじゃないの!目的が「眼科のプライドを守るため」では、悲しいです。

今回、I様のプリズム矯正に関して、眼科は「けしからん!」と言ったのか、それともユーザー本位の対応をしてくれたのでしょうか。

いずれにしろ、当店の目的は「眼科に睨まれないようにすること」ではありません。


なお、複視のすべてがプリズムレンズで解消されるとは限りません。
「正面を見た場合にはプリズムレンズが有効だが、側方視では複視になる」ということもあります。

斜視の種類や斜視の程度によってもプリズムレンズが有効でない場合もあります。というか深い
抑制が入っている普通の斜視にはプリズム矯正はほとんど無効です。

片眼だけにプリズムレンズを入れたほうがいい斜視もあります。



I様は高校生ぐらいまでは視力は1.5〜2.0あったとのことです。
だとすれば、もしかしたら遠視があったのではないでしょうか。
軽い遠視だったとすれば、視力には問題ないし、調節力が旺盛な10代のころは近業もそんなに不自由ありません。

しかし、遠視が原因の内斜位は存在していた。

やがて、10代の終わりごろに眼の屈折は近視に移行したが、遠視だったころの記憶を脳は保持したままになっている。
眼位は内斜位が残ったままになっていた。
推測ですが、これも「近視で内斜位」になる原因の一つでしょう。

眼(外眼筋)のメカニズムからすれば近視は外斜位になりやすいのですが、「近視で内斜位」は外傷的因子は別としてハッキリとした原因がわかりません。

内斜位は外斜位に比較して、問題が発生しやすい眼位です。

・眼精疲労
・物が時々に二重に見える
・遠近感が悪くなる
など。
内斜位を補正する役目である外直筋の作用は内直筋に比較して弱いからです。
脳は基本的に複視を避けようとしますが、頑張っても力の弱い外直筋は悲鳴をあげます。

その悲鳴は身体の悲鳴に繋がります。

そういう日頃の外眼筋の負担があるきっかけで、大きく爆発することもあります。

近視で内斜位のかたの場合、違和感などの問題で掛けづらいことも予想されますが、できるだけ適切に眼位を整えておくことをおすすめします。

また、子供の遠視も問題が起きやすい眼です。
遠方の視力がいいからといって、正視とは限りません。ご注意を。

  

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