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高知 メガネのハマヤは、浜田清と久美+タカアキのメガネ店です。

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〒781-2105 高知県吾川郡いの町新町66

複視について 10 

複視とは一つのものが二つに見える現象です。

複視の事例 10

80代のJ様

交通事故に遭い、長時間右眼が開かなかった。開いたときには複視になっていました。
とご来店されました。

眼科処方箋をご持参されていました。

右眼 膜プリズム 20△ 基底 70〜80°

備考欄には、
右眼筋麻痺で上下方向に動きが障害されています。複視は顎の上げ下げで変わりますが、基底方向は上方から少し鼻側に回して、自覚的によい方向ではってください。
と書かれています。

それで、実際に20△フレネル膜テストレンズで、試していただきました。

まず、80°から 「ものが二つにみえます」とのこと。
75°では「これもダメ」
70°では「同じこと」
他の方向(基底)でも「複視です」とおっしゃいます。

さて、困りました。自覚的には20△では、よい方向がありません。
とりあえず、当店でプリズム度数の検査をしてみました。

備考欄にも書かれていたように、麻痺性の斜視は視方向によって、偏位量が異なることは珍しいことではないので、視線に配慮して検査をしました。
距離を変えての検査もしてみました。
不安定な要素もあると思いますので、検査方法も複数の検査を実施しました。

結果、 右眼10△〜12△B.U. 5△〜6△B.I.ぐらいの矯正で複視が解消されます。

では、どうするかです。
「複視が解消されるプリズム度数で作ったらいいのじゃないの!」と思われるかたも少なくないでしょう。

だけど、そうは簡単にはいかないのです。
病気ではない普通の大人のメガネ調製ならいざしらず、(それでも処方箋度数絶対厳守の店もあります)この場合、「麻痺性斜視」という病的なものが絡んできます。
今後、お客様と眼科との関係のこともありますし、処方箋通りに作らないと問題が起きる恐れが出てきます。(眼科に睨まれるとか)

一介の商売人としたら、やはりそれは怖い。
それと、「意図してプリズム矯正を多くして、裸眼とは逆方向の複視を発生させて、治療する」狙いかも知れません。(そんな治療方法があるのかどうか知りませんが、でも、それなら備考欄にはあのようなことは書かないと思います。お客様もそのようなことはおっしゃっていませんでした)

無難な対応としては、処方箋通りに作りたいのです。
その場合、やはり結果が悪くても「自店に責任はありません。処方箋通りに作りました」という対応ができます。


でもユーザー本位に考えると「それでいいの?」ってことになります。
「再度眼科に行ってください」と言うのも無難な方法なのですが、このお客様は事故で体が弱っている高齢者のかたです。
かえって、ややこしくなるのは目に見えているし、この方法もユーザー本位ではありません。

ユーザー本位にやればやるほど、眼科に睨まれる現実もありますが、今回、お話合いの結果、当店処方プリズム度数で調製することにしました。
今後、プリズム度数は大幅に変更することも予想されます。
その場合、お客様とのお話合いで、問題点は改善していきます。


次の日に仕上がりメガネをお渡ししますと「眼が開けられます」とおっしゃっていただけました。
さてさて、眼鏡士としては今回の対応でよかったと思いますが、今後どうなるやら。

目的が「複視を解消し、両眼単一視の獲得」であれば、眼科からお咎めはないと思います。(多分)

できれば、大人の対応として「良いメガネ屋さんに行かれましたね」と言っていただきたいのですが、無理かなー。
もし、そう言ってもらえれば、患者さんと病院とメガネ屋とで、理想の関係になると思います。

なお、眼科処方プリズム度数 20△は間違っているわけでないので、誤解のないようにお願いします。その時点では20△が検出されて、病院内では「具合がよさそう」ということだったのでしょう。
「環境が変われば、プリズム度数(麻痺)も変化する」ことも日常よくあることです。

病院のような非日常的な環境よりも、「リラックスできる当店検査のほうがプリズム量が少なくなった」ことも考えられます。

今回、処方箋を書かれた先生は「無料補償のメガネ店へ行くように強くすすめる」先生ではないので、その点は好感が持てます。



プリズムレンズの基底方向の表示法には、

基底上方(B.U. ベースアップ)
基底下方(B.D. ベースダウン)
基底外方(B.O. ベースアウト)
基底内方(B.I. ベースイン)

のベース表示と
基底を0〜360°の角度表示で示す方法があります。(たとえば、 右眼 6△B.U.+6△B.I.の合成プリズムは、約8.5△ 基底45°になります)

メガネ店では前者で示すことが多いです。(多分)

どちらの表示が優れているとかは一概には言えないのですが、一般のかたに説明するにはベース表示に軍配があがるでしょう。

当店の説明は、「プリズムレンズを通過する光線は、基底(レンズの厚いほう)に進行方向が曲げられます。

像は頂角のほうにズレて見えています。このプリズムの原理を応用し、外斜位には、基底が内に向く方向(ベースイン)に、内斜位には基底が逆の方向(ベースアウト)に入れます。上斜位+外斜位の場合は、ベースアップ+ベースインで矯正します」という感じでしています。

それに比較しまして、眼科処方の角度表示に理解をしているかたはほとんどいません。(理解してもらう必要もないのかも知れません)

だから、当店で説明することになるのですが、左右眼での角度表示の違いなどの説明はちょっとやっかいです。

それと、通常の斜位は光学的にも、左右でレンズの厚みを揃える目的にでも、左右眼でプリズム量を振り分けたほうがいいのですが、そういう配慮をしない眼科もあります。(眼科がメガネ調製に関する光学的知識に疎いのは仕方ありません。病気を治すことが本職です)
http://hamatami.cocolog-nifty.com/diary/2016/02/post-cd34.html

眼科で角度表示にする場合、「片眼のみのプリズム処方の場合、角度表示にメリットがある」事情があるからかも知れません。

■プリズムの基底方向

  

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